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とりあえずかけそば一丁

アニメとか映画とか気になったものについて

「宇宙をかける少女」とはなんだったのか

今回は『宇宙をかける少女』より、「宇宙をかける少女」について考察してみようと思います。


本論に入る前に、作品の外縁的な部分について触れておこうと思います。


宇宙をかける少女』は2009年に地上波で放映されたアニメです。監督:小原正和、アニメ制作;サンライズ舞-HIMEスタッフによる作品です。

主人公の獅子堂秋葉がある日ブレイン・コロニーであるレオパルドと出会うことから、様々な事件に巻き込まれるというドタバタSFアニメという感じです。



さて、ここからいよいよ本論である「宇宙をかける少女」の考察に入っていきます。

宇宙をかける少女」というワードは作中何度も登場するキーワードで秋葉とナミを指して呼称されますが、その意味が直接的に語られるのは第25話においてです。
 
   秋葉「大体なんなのよ、宇宙をかける少女って!」
   神楽「イグジステンズのクイーンにして黄金銃を持つ乙女、ブレイン・コロニーとの戦いに終止符を打つ、それが宇宙をかける少女
   ―宇宙をかける少女 第25話より

この文章から読み取れるのは、「宇宙をかける少女」が「力」の持ち主であり、戦いにおける重要な「鍵」だということです。しかし、この直接的な言及のみでは、このキーワードの作中に通底する深層的な意味を読み取ることは出来ません。
そこで、「宇宙をかける少女」が指す対象、すなわち獅子堂秋葉について考察することで、「宇宙をかける少女」について考えてみたいと思います。

獅子堂秋葉は巨大な財団である獅子堂家の三女です。他の姉妹が、各々の特性を生かした道を歩んでいるのに対し、何の取り柄もないことからコンプレックスをいだき、自分にしか出来ないことを追い求めています。
このことが、如実に表れているのが第1話の次のシーンです。
 
   秋葉「他人を巻き込むな、このバカ!私はね、将来の夢もないし、何をやればいいかも分からない。けどね、死にたくはないの!探したいの、自分がやりたいことを!自分にしか出来ないことを!」
   ―宇宙をかける少女 第1話より

この秋葉のパーソナリティが「宇宙をかける少女」にかかわりがあるという示唆が第2話で見られます。
  
   神楽「なるほど、彼(レオパルド)が気に入るわけね。夢もなくやりたいこともない。何も無い、可哀想な子。」
   秋葉「ずいぶんはっきり言いますねぇ。誰ですか、あなた?」
   神楽「だから、誰よりも走ることが出来る。どこへも向かっていないあなたは、ずっと立ち止まっていた。体には力が溢れていて、どこにだって駆けていける…違う?」
   秋葉「う〜ん…あの〜、何のことやら?」
   神楽「楽しみだわ、わくわくする…宇宙をかける少女
   ―宇宙をかける少女 第2話より

第2話以降なし崩し的に、秋葉はレオパルドのパーツ探しに協力することになります。そして第4話の事件により、秋葉は一度レオパルドのパーツ探しに協力するのをやめ、ほのかと口論になります。それが、以下のシーンです。


   ほのか「次のパーツは月にある」
   秋葉「やだ…」
   ほのか「なぜ?」
   秋葉「もう顔もみたくない、あいつの…」
   ほのか「そんなに怒ることはない」
   秋葉「怒るに決まってるでしょ!」
   ほのか「あたしは、裸にされても平気」
   秋葉「わたしは平気じゃないの!」
   ほのか「秋葉がいないとレオパルドが困る」
   秋葉「なんで…あいつが?」
   ほのか「レオパルドが秋葉を選んだから」
   秋葉「なんで…なんであたしなの?あたしに…なにがある        の?」
   ほのか「運命を信じて」
   ―宇宙をかける少女 第5話より

ここで、秋葉が「宇宙をかける少女」として選ばれたのは運命であるとほのかは述べています。

さて、日常に戻った秋葉はベッドの上で次のように振り返ります。

   秋葉「ベッドで寝るの久しぶり〜。ホント…久しぶり」
     「やることないって…こんなに退屈だったんだ…」
   ―宇宙をかける少女 第5話より

この後、いつきに寝こみを襲われたことから、秋葉は再びレオパルドに戻ることを決意します。それは、自分にしか出来ないことを求めるためです。

ここまでの、シーンから、秋葉は運命的に「宇宙をかける少女」としての素質をもっており、但し本人にその自覚はないということがわかります。
そして、始めは、レオパルドに求められていやいや駆けていた宇宙は、そのうち彼女自身の自己実現の旅に変わっていくのです。


作品中では明確に語られていませんが、秋葉とレオパルドに共通するキーワードは「自己実現」であると考えられます。「自己実現」を求めるレオパルドが同じく「宇宙を駆ける」ことを求める秋葉に惹かれて「宇宙をかける少女」を彼女に見出したのでしょう。

しかし、それはあくまで秋葉に運命づけられたものです。ネルヴァルと戦う宿命にある獅子堂家の三女としての役割なのです。その点で、秋葉の「自己実現」は本人にとっては自由意志であるかのように見えながら極めて決定論的であると言えます。



ここまで「宇宙をかける少女」の意味について振り返ってきました。次回は、作品『宇宙をかける少女』は何を語りたかったのかについて考えてみたいと思います。