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とりあえずかけそば一丁

アニメとか映画とか気になったものについて

『楽園追放 -Expelled from paradise-』感想:戦闘シーンを楽しむ作品としてオススメ

こんにちは,昼休みを利用して忘れない内に感想をば.

 

昨日『楽園追放 -Expelled from paradise-』を鑑賞したのでその感想を上げます.

視聴形態について.BDをPCのプレイヤーで再生し,映像をプロジェクターに出力しました.ただ,音についてはサラウンドシステムがないので小型の2chスピーカーを用いており映像の大きさの割には音の迫力は若干物足りない感じでした.

 

脚本はまどマギで話題になった虚淵玄さん.

沙耶の唄』,『BLASSREITER』,『魔法少女まどか☆マギカ』,『翠星のガルガンティア』辺りを自分は触れているんですが,『沙耶の唄』『BLASSREITER』が良く出来ていただけに『翠星のガルガンティア』はかなり物足りなく感じました.

 

個人的には,虚淵玄さんの魅力が発揮されるのはホラー寄りのファンタジー作品だと思っています.というのも,虚淵作品のストーリープロットというのは対立構造が単純かつ明確になっているので,ストーリーをそのままなぞっても面白くない,故にその対立構造に苦しむ登場人物を主観的に描くことで深みを与えているのだと考えています.そして,主観的に苦しむ表現というのはホラーというジャンルとよくマッチするということです.例えば,彼の代表作『沙耶の唄』ではある日突然世界がとても醜悪に見えるようになった主人公の物語です.主人公は醜悪に見える世界を選ぶか,それともかつての正常な世界に戻るのかという2択を迫られるのですが,それまでの過程が彼の恐怖や快楽といった原初的な感情に訴える描写を通じて切々て描かれており,それが結末を陳腐化させない作りになっています.『BLASSREITER』では周囲の仲間たちが次々とゾンビ化していくという過程を主人公の目線を通して描くことで世界の切迫感,主人公の孤独感を描いていました.『魔法少女まどか☆マギカ』については言うまでもないでしょう.魔法少女たちの物語は徹頭徹尾主観的なものでしたから.

 

一方で『翠星のガルガンティア』という作品を通してみると,主人公が属する世界と漂着した星での世界における世界観の対立という,これまでみられたような世界観の対立構造は見られるものの,これまでの作品と比較すると物語の進行は淡々としており,牧歌的にすら見えます.これは,他の作品と異なりガルガンティアディストピア的な世界から自由な世界への移行という,ポジティブな変化であることも理由の1つですが,ロボットアニメ故のヒロイスティックな主人公の属性がそれを阻んでしまったことにあるのではないかと思います.このように主人公の葛藤が弱いため,後半でのドラマティックな展開も「いつもの展開ね」と軽く受け止められる作りになっているのではないかと思います.

 

本作品『楽園追放 -Expelled from paradise-』はSF,ロボットアニメということ,しかもディストピアから人間らしい世界への移行という点で『翠星のガルガンティア』と似通っている部分が多いです.

そして,僕が懸念していた通り,本作でもストーリーの弱さはかなり際立っていました.

ディストピア世界から来た主人公アンジェラと,人間らしい世界の代表ディンゴ,そして人間よりも人間らしいAIフロンティアセッター,という役者の時点でお察しですが虚淵玄作品を見慣れてなくてもそこら辺のSFを多少見ていれば先の展開はかなり読めてしまいます.

以下,ネタバレが増えていくのでご注意願います.

 

 

 

本作のストーリー上の重要なカタルシスポイントとしては,ディストピアの世界観に染まりきったアンジェラがディンゴとフロンティアセッターと交流する内に考えを改め,DIVAの世界観から開放されるところにあります.もう1点は,フロンティアセッターの外宇宙への旅立ちと,アンジェラの生きる目的の発見です.

 

最初の点については,見なくても予想できるくらい分かりやすい展開なのですが,映画として物足りないのは,アンジェラが世界観を改めるのに必要な要素をほぼ全てディンゴの語りによって説明してしまっていることにあります.そもそもアンジェラという存在自体,DIVAの代表としても空虚に見える,というのもこれもディンゴのセリフによって説明されてしまうのですが「DIVA民はメモリの割当によって自由を制限されている,故に自由を拡張するために社会の奴隷と化している」わけですが,肝心のDIVA民の自由が制約されている感じがDIVA世界の描写が弱いために伝わってこず「ディストピア世界だし,みんなわかってるよね」と視聴者の想像力に委ねる形になっています.アンジェラにしても,仕事の成果を求めるエリートという感よりはツンデレ感が先立ってしまって結構「人間らしい」ですし.その辺りの弱さ含めこの展開はイマイチ感動できませんでした.夜空を見ながら2人で会話するという構図自体は美しいんですけどね...

 

第2の点については,フロンティアセッターがアンジェラよりもディンゴよりもある意味で最も人間らしいという展開は素直に面白いと思いました.ディンゴが何故外宇宙への探求を選ばず,地球に残ったか,この点は考察できていませんが,物語中の彼の生き方を観るに,彼は現世的な欲望の象徴としての人間性を象徴しているのではないかと考えています.金,肉,睡眠,音楽といったもの(物理的な人間でないと楽しめないもの)を彼はこの上なく楽しんでいるように見えます.一方で外宇宙への探求というのはそういう現世的な欲望とは対極にある,知的好奇心を象徴している.だから彼は外宇宙へ旅立たなかったのではと考えています.

主人公であるアンジェラの選択のシーンは劇的な演出があって非常に気持ちいいですが,アンジェラが空虚に見えてしまったので若干弱く感じました.

この作品通して,アンジェラは割と典型的なツンデレキャラに堕しているキライがあって,一方でディンゴは万能すぎるんですよね.その辺りもストーリー的にちょっとのめりこめない点ではありました.

 

ストーリーについては結構難点をつけてしまいましたが,戦闘シーンの演出面は近年のロボットアニメの中でも白眉のシロモノでした.

まず,スタッフに00の水島精二エウレカセブン京田知己,そしてマクロス板野一郎とこれだけ豪華なスタッフがよくもそろったものです.序盤のサンドワームとの戦いから始まり,後半の宇宙戦〜地上ゲリラ戦と戦闘シーンは何回も見直したくなる作りだと思います.

 

アンジェラが地上戦で最後に戦うシーンなどは00のトランザムにしか見えない動きをしており,00好きとしても楽しめました.

後は宇宙空間のミサイルを撃墜するシーン,アーハンの動きが急激に変わりミサイルを撃墜し,レールガンを発射し撃ち落とす流れは素晴らしいですね.個人的には撃ち落とした後,さらっと装備を宇宙空間に投げ捨て変形する流れがツボでした.

ゲリラ戦のシーンは,ゲリラという地形と罠を利用した戦いと圧倒的戦力による消耗戦がいい塩梅になっており,防御側の一方的な強さに終始せず,また,DIVA側に圧倒されるわけでもなく素晴らしかったです.

 

ちょっと残念だったのは,アンジェラの顔は映るのに殺される側のパイロットの顔は映らず,ラストでちゃっかり生き残っている描写があるのは残念で,ちゃんと相手のパイロットを殺す必要があったのではないかと思います.

そしてアンジェラちゃんはしっかDIVAに対する反逆者として永遠に追跡されて欲しいですね.

 

というわけで,楽園追放,オススメです.